「表現の仕方」


肯定的表現

 肯定的な言い方・表現とは「相手の自尊心、立場、気持を守った表現、言い方」を指します。例えばパソコンショップでデスクトップとノート型、どちらにするか迷っているとします。1時間たっても未だ決まりません。2時間経っても未だ決まりません。結局今日は決めることが出来ず、出直す事にしました。
その人に対して『優柔不断ですね』『決断力がないですよ』と言うのは、否定的な言い方で相手を認めた言い方ではありません。『しっかり考えておられますね』『きちっと見極めておられますね』『慎重な方ですね』『考えが深いですね』などといった言い方をすれば、肯定的な言い方になります。
逆に何の予備知識もなく10分で決めてしまった人がいるとします。その人に『決断力がある』『決断が早い』『思いっきりがいい』というような言い方をすれば、肯定的な言い方となり、『何も考えていない』『単純』『お金を粗末にしている』『衝動買いじゃないの?』と言えば、否定的な言い方となります。
これは極端な事例かもしれませんが、ここでは言い方、つまり表現の仕方について、少しこだわってみたいと思います。
 「なかなか決めない人」には『優柔不断』と言ってもそれでかまわないじゃないか。優柔不断は優柔不断。それでいいではないかとおっしゃるかも知れません。しかしここで私たちが知っておかなければならないことは、人間は誇り高き動物であると言う事です。人は自分自身のことに一番関心を持っているのです。誰しもみな人から尊敬されたい、認めてもらいたいと考えているのです。だからこそ肯定的なものの言い方が必要とされます。人を認めない否定的な言い方をしますと、相手に不愉快な印象を与え、相手を傷つけ、同時に反発も起こり、悪く行けばこちらの話しも受け入れてもらえなくなります。人は他人から言われたことについて、内容ではもっともだと分かっていても、『私の悪いのは分かる。しかし『あの言い方は何だよ。あんな言い方をしなくてもよいのに』と言う風に受け止めてしまうものなのです。内容より言い方に怒りを感じてしまうのです。あなたにそんな経験はありませんか?自分の長所であり、自分が良いと思って行っている行動を悪いように言われればどうでしょう?
以前こんな対話をしたことがあります。会話の中で「私はあまり嫌いな人がいません」こんな言葉を出しました。すると相手の人は迷わず私に「主張がないんですね」という言葉を返されました。職業柄、特に不愉快な気持ちにはならず、これもまた正解と受け止めましたが、少なくともこれは肯定的な表現ではありませんよね。通常は不愉快な思いにさせます。肯定的な言い方は人を喜ばせ、気分よくさせます。
人と仲良く、良い人間関係を作り、人から好かれ、よい協力関係を維持しょうと考えるならば、まず肯定的な言い方を身につける必要があります。『丸いタマゴも切りようで四角。ものも言いようで角が立つ』と言う事です。


肯定的な表現 言い方にする為に5つを上げてみました

1)コトバそのものを肯定的にしよう

こんな話しを聞いた事があります。一人の男性がお見合をする事になりました。話しを持って来た人は、その女性の事を「学生時代は勉強家で色も白く、活発で大変かわいい女性」とほめて、お見合いを勧めたそうです。この男性は自分がいよいよお見合いをするという事で、友人に相談に行きました。その時たまたま彼の妹がお見合い相手の同級生だと言うことで話を聞きますと、まったく違う答えが返ってきました。『学生時代は勉強家で色も白くと言うことですが、勉強家ではなく頭が悪いから勉強しないとついて行けなかっただけですよ。ガリベンで融通のきかない人。色が白いと言うより青白かった。活発というより落つきがない子ですね。かわいいというよりはくちんちくりんと言った方が当たってますよ』こんな答えが返ってきました。その男性はお見合いをするのをやめたようです。この話は人から聞いた話で、真偽のほどは確かではありませんが、もし本当ならひどい話しですよね。
どんなことでもひとつの現象から両面の表現が出来ます。ウソまでつく必要はないと思いますが、常に肯定的に話す事を心がけて下さい。

   (例)

  その他、生活の中に否定的なコトバが沢山あります。なにげなく使っているコトバもあります。肯定的なコトバを沢山知って、肯定的なものの見方を養い、肯定的なコトバを使い慣れてほしいと思います。

2)表現を肯定的にする

落語にこんな話があります。
何かにつけてエンギのよい事を言う番頭さんと、エンギの悪いことばかり言う下男がいました。お正月のこと、雑煮を食べていますと、その中からクギが出てきました。するとさっそく番頭が「モチからカネが出ました。この分ではお店はきっとカネモチでございます」と言って主人を喜ばせました。これをみていた下男が「それはおかしいですよ。カネからモチが出たのならカネモチだけど、モチからカネが出たんだから、『モチカネる』でしょう・・・と。

1月のある日、電車の中でこんな会話を耳にしました。
「元旦早々足をグネッテしもうて、3日間どこにもいけず家で寝てましたんよ。スタ−トに失敗です。何か今年は悪い年になりそうですわ」
それに対して相手のご婦人はこう言いました。「いい正月出来たやないの。動けないことを理由に、動かんでもよかったわけでしょう。私なんか正月でゆっくりしょうと思っているのに、亭主が酒のアテ無いかとか、あれはどこにあるんや、とかうるそうて、結局ゆっくり出来へんかったわ。あんたは今年良い年になりそうやなぁ。元旦のねんざで一年の悪いことは全て済んだねぇ」・・・このご婦人の表現、すばらしいとは思いませんか。
 このように、同じ現象でも、表現の仕方ひとつで人を喜ばせたり、逆にイヤな気持にさせたりする事が出来ます。あなたは落語の番頭さんですか?それとも下男ですか?番頭さんの物言いは肯定的な表現。下男の言い方は否定的な表現の典型例だということになります。

*質問をして的外れの答えが帰ってきたとき=「何を聞いてるのや。しっかり聞け」−−−−×
*質問をして程度の低い答えが帰ってきたとき=「その程度しか答えらんのか」−−−−×
*質問をして答えが帰っえこないとき=「こんな事が分からんのか」−−−−×
このような言い方は相手を認めた言い方ではありません。
出来れば
『私しの質問の仕方が悪かったようですね』−−−−○
『そんな考えもありますね』−−−−○
『そんなに深く考えてもらわなくてもいいですよ』−−−−○
 などと言えるだけの心のゆとりと表現力を持って下さい。

3)「肯定の否定」、つまり相手を受け入れ相手を認め、相手の立場や気持を気遣う。その上ではじめて自分の意見や反対の意見を言うこと

 例えば、相手がAという意見を支持し、私はBという考え方を持っていたとします。
『あなたの言われたAは、言われるとおりで大変素晴らしいですね・・・・・。しかしこういう風に考えるとBは素晴らしいですよ』
といった会話になります。これを「イエス、バット方式」とも言います。

 私たち人間は10人10色。いろんな意見があっていいと思います。すべて相手と同調するだけが良い表現ではありません。時として自分の意見をはっきり言うことも必要です。ただ言い方には気をつける必要があります。相手が自分と違う、或は反対意見を持ちだしたとき、すぐに反対意見を言えば相手は気分を悪くし反感を買います。そこでいきなり反論、反対意見を言うのではなく、まず相手の意見をなんらかの形で受け入れ、次にこちらの意見を持ち出すのです。このことで相手を肯定した事(相手を認めた話)になり、少なくとも正面衝突はさけられます。

「肯定の否定」4つの言い方

@まず相手の意見に対して同意してから
相手の意見に対して、一部分を一致させからこちらの意見を持ち出す。 『いまおっしゃいました・・・・のことについてはその通りだと思います。また・・・・・・・についてもまったく同感です。しかし(ただ)・・・・』
A多くの人がそうである
多くの人の意見が相手の意見と一致していることを認めてから、こちらの意見を持つ出す。 『あなたのおっしゃることは世間一般の方々(00さん)もそうおっしゃっています。もっともだと思います。が、しかし・・・』
B自分もそうであった
相手の考えに対して自分もそうであったと話してからこちらの意見を出す。 『おっしゃる通りです。実は私もあなたと同じように考えておりました。ところがですね・・・・・・・・・・・・・』
C相手をほめてから
意見を言う前に相手自身をほめてから 『さすがですね。そういった御意見をお持だという事は、ふだんからこういう問題につてかなり研究勉強されてますね。今日は大変勉強になりました。ところでこういう点もちよっとお考えいただけないでしょうか・・・・・・・』

表現上の注意点

☆「しかし」「ただ」「ところが」・・・等を決まり文句の様に使い過ぎると、相手を認めた事が生かされず、自分を主張する為に肯定したと言う印象になってしまいます。いつも同じパタ−ンを使わず、口調や表現等も変えて下さい。
☆「しかし」「ただ」「ところが」・・・等を早く出し過ぎないことです。肯定部分が少ないと、肯定表現の印象が薄れてしまいます。

第一声から反対意見をなぐりつけるのではなく、まず相手を認めた言い方から入る事です。反対意見が強ければ強い程、十分肯定して自分の意見を出していく。〔多くの場合、第一声からの反対意見。そこから激しい議論が始まります〕 


4)サンドイッチ話法

 肯定の否定と同じような表現ですが、仕事等で批評や評価などをする時、また子供のテスト結果を評価する時、「サンドイッチ話法」を使って下さい。きっと今後の結果も良くなっていきます。
(ほめる→問題点指摘→激励)・・・・『うん、なかなかよくまとめているね。すばらしい。ただこの辺をもう少し工夫した方がいいよ。がんばれよ』等のように「問題点指摘→ 忠告→ 批判」を中に挟んで話をします。言ってみれば、ひげを剃る時にいきなり刃物をあてるのではなく、まずシェービング・クリームをぬって、皮膚が十分耐えられるようにしてからひげを剃っていく。しかもその後かぶれない為にアフターローションをぬって仕上げておく。話も同じ要領です。これを心がけると今日から貴方も有能な上司、教育上手な親に変身出来ます。


5)必要に応じ毒消しを使う

 言い過ぎてしまって時、言いまちがった時、コトバのミスをおかしたときなどに、中和剤として必要に応じ「毒消し」を使います。(あくまでこの方法は非常用ですが)
*「女性はずうずうしいですね」と言ってしまった−−−−『ここにおられる方は別ですが』
*「夜遊びをした遅刻者に対して言い過ぎた」−−−−『私も若い時よく夜遊びをして先輩におこられたことがあるから、あまりえらそうな事は言えんがね』(中和剤をまく。一度の中和でだめな場合もあります。その時はもう一度中和剤をまく) 

 言うまでもありませんが、中和剤をまかないのが最善であることを忘れずに注意して言葉を使うのが原則です。(きつい毒の言葉は中和剤を何回まいても利かない)


 以上、一応5つ上げましたが、単にコトバだけの問題としてだけではなく、相手に対する思やりの気持、自尊心、立場、気持を守った心で言い方を工夫し使ってほしいものです。そして今回は言い方に限定しましたが、接し方・態度・話題・聞き方等々、いろんな方面において、「肯定的に」と言うことを忘れないでいただきたいと思います。何といっても、私たちは人を相手にしているのですから。

 

[練習問題]

1.一つのコトバ、 一つの単語を肯定的に言い換えて下さい。

うすのろ                            
ケチ                            
元気がない                            
ほら吹き                            
あわてもん                            
頑固                            
出しゃばり                            
いい加減                            
ごますり                            
気位が高い                            
短気                             
しゃべり                             

 

2.肯定と否定の両方の表現をしてみましょう。(人、物事を両面から見る為にあえて否定的表現も書き出して下さい。嫌いな人も好きになれるかも?)

       肯定的表現       現 象        否定的表現      
   時間を守らない人   
   ブランド物しか持たない人   
   パソコンを5台持っている人   
   友達の多い人   
   友達が少ない人   
   携帯電話を持っていない人   
   インターネットを知らない人    
   無料講座しか受けない人   
   相手によって接し方を変える人   

           上記は一例ですが、その他いろんな事を両方から見て表現してみて下さい。


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